猫 vs 蛇我が家では、実に様々な動物を飼っている。過去に2匹の日本犬、十数匹に及ぶ鳥、金魚、そしてハムスター。特に鳥が凄かった。部屋の中で、ウグイスの鳴き声が聞こえるのは、日本中捜しても滅多に無いだろう。飼って良いのか?と聞かれてしまうと困るが、私はそのあたり詳しくないし興味も無いので、あえて多くは語るまい。 現在でも、数匹の鳥、2匹の猫、スズムシを飼っていたりする。はっきり言って、うるさくて近所迷惑も甚だしいが、あえてそれも語るまい。さらに、天井には蜘蛛を、その裏にはネズミを、台所にはゴキブリを、非常に多数飼っているのだ。ちなみに飼っているだけであって、飼いならしているわけではない。このあたり、誤解の無いように。 先日、一つの事件が発生した。我が家の鳥かごの一つに、いつもなら居るはずの鳥が居ない代わりに、1匹の蛇が入っていたのだ。実に驚くべき出来事だ。鳥が蛇に化ける。そこら辺の似非手品師にも真似できないような事が、自然発生した。世の中こんなことがあって良いものだろうか。 …とまあ、くだらないことばかり言っていると収拾が付かなくなるので、このあたりで本題に入ろう。 見ると、蛇は鳥かごから出ようとして、もがいているところだった。蛇の胴体部は、その一部が異様に膨らんでおり、それが邪魔して鳥かごの細い隙間から出られないのだ。もちろん、入って来るとき、あの膨らみは無かったに違いない。あの部分にカッターでも入れれば、膨らみの正体は確認できるが、我々は見なくとも何であるか知っている。 目の前の事実に、私の母の悲しみと蛇への憎しみは大きく、道具を使って蛇を引きずり出すと、そのまま風呂場へ持っていった。いたぶって殺すそうだ。ここから、永きに渡る母と蛇の死闘が開始された…。 なかなか手強い相手だ。膨らんでいる腹に注目!! 我が家には、2匹の強力な番兵が居る。そう、猫の存在だ。自分で触るのは気持ち悪いので、母はまず、この2匹の猫に蛇をいたぶらせることにした。 まずは第1ラウンド。対戦するのは、我が家に古くから居る”ぐうたら”の異名を持つ、萌え萌え。ラウンド、開始! Fight!! 「にゃ〜お、にゃ〜お。」 緊張感の無い鳴き声が、風呂場中に響き渡る。自分より小さい蛇を目の前にして、どうやらびびっているようだ。鳴くばかりで、まったく手が出せない。 「がんばれ、萌え〜。」 むなしい母の声援も響き渡る。はっきり言って、勝負になっていないのは確かだ。 シュッ! 最初は慎重に身構えていた蛇だったが、相手が弱腰だと見て取ったのか、果敢に攻撃を仕掛けてきた。敵ながら天晴な奴だ。 サササッ! 驚いて、ゴキブリの如く逃げ出す萌え萌え。いつも他の猫にいじめられているので、逃げ出す速度は異様に速い。勝負はついた。蛇の方が強かった。 第2ラウンド。我が家のエース、”俊敏”のチビ。飼い始め当初は、餌を食べているときですら、人間に指一本触れさせなかった素早さの持ち主だ。彼女なら、蛇と戦えるかもしれない。 ぱしっ、ぱしっ! シュッ、シュッ! チビが素早く手でけん制すると、蛇はそれをかわしつつジャブを決めてくる。多少びびっては居るが、チビも決して負けてはいない。 ぱしっ、ぱしっ、ぱしっ! チビの平手(注:平手しかない)が、次々と蛇の頭にヒットする。さすがに蛇は分が悪いと踏んだのか、じりじりと後退し始めた。 進めチビ! 蛇を倒せ!! 勝てる! そう思った時… カランッ! チビの隣で、置いてあったシャワーのホースが、滑って音を立てた。驚いて逃げ出すチビ。何と言うことだ! あともう少しだったのに、蛇ではなく、生きてもいないホースに敗れるとは…。 我が家の誇る番兵陣は敗れた。かくなる上は、人間様が倒すしかない。シャワーの温度を最大温度の75度に設定して、蛇にかけまくった。最初は逃げようとしていたが、狭い風呂場ではそんな場所も無く、次第に弱っていく蛇。わずか数分の事だったが、蛇は静かに息絶えた。威張って良いのかは知らないが、人間の勝利だ。 文明の利器を用いた人間が勝利した。死後、硬直した蛇の死体は、持ち上げてもこの形のままだった。 実に興奮に満ちた時間だった。 戻る
ページ作成 熊恭太郎
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