groupASKという三人のグループが作った、カードタイプのロールプレイングゲームシステムの事です。基本的には剣と魔法の世界、中世ヨーロッパの雰囲気をベースにしているようです。
『くだらないオチ』 ©匿名希望の入沢
実際のプレイ画面は上の画像のようになります。種族的に敵対するモンスター、ゴブリンとの戦闘シーンのひとコマです。
プレイヤーもモンスターも、全てカードで表現されています。プレイヤーの体力はゲージで表されているものの、ゴブリンたちは様子でしかわかっていません。
このゲームでは、キャラクター、アイテム、魔法、モンスター、それから扉や宝箱など、すべてのオブジェクトがカードで表現されています。北に進む、休憩を取る、日誌を読むなどの行動も同じ扱いです。
また、キャラクターの身体的能力や戦闘中のダメージなど、通常数値として表されるものはほとんど隠蔽されているのが特徴です。それらは、例えばスキルカードを手にした時に"適正"として表現されたり、"負傷"などの言葉で状態を表したりします。
右の画像は、あるキャラクターが所持するスキルカードの一覧です。各カードに赤と緑のランプがついています。上段の赤ランプは"残り使用可能回数の割合"を表し、下段の緑ランプは"そのキャラにどれだけ適しているか"を表します。
これらはつまり、実際の世界として見た時には大雑把にしかわからない、というイメージを取り入れるために導入されています。これによって、数値化されて攻略が進んでいくものと違う、漠然としている臨場感(ややおかしな表現ですが)をかもし出しています。
このゲームで最初に触れる魅力はまず、キャラクターメイキングでしょう。
まず冒険者たちが日々を過ごす事になる"宿"を作り、しかる後に自分の分身となる冒険者を創造します。
Card Wirthではシナリオが会話を作ります。しかし、そこで語られる言葉は各々の性格に応じて変化します。それを一人一人、生い立ちから決めていくような作業です。
ここで形作られた個性によっては、時としてストーリーが別の展開を見せる事もあります。助けを請う妖精を裏切り自己の利を求めるか、逆に信じて騙されるか……。様々な展開を予想しつつクリエイトしてみてはいかがでしょうか。
また、この"特性"と"素質"によって各スキルやアイテムへの"適正"が決定されます。動きの鈍い力押しタイプになるか、戦闘の苦手な神官タイプになるか、はたまた罠も鍵も怖くない盗賊タイプになるか。あなたの生み出すキャラクターは何に秀でているのでしょうね。
このゲーム最大の魅力は、なんと言っても自分でシナリオを作成して配布できるところにあります。
元々、groupASKの用意した基本シナリオは10本程度しかありません。今では軽く数百を数えるその他のシナリオは、全てこのゲームに魅了されたプレイヤーたちが自らの手で作り上げたものなのです。
ゲーム本体は、本家であるGROUP ASK WEBSITEやVectorなどのWindowsソフトウェアを扱ったサイトにて配布されていますが、そのフルパッケージにはCard Wirth Editorなるものが同梱されています。
こちらがそのコントロールパネル部です。
右側にタブ分けされたツールボタンを追加していき、その中にメッセージを記述したり条件分岐をさせたりします。
こちらはあるシナリオの実際の設定状況です。
あるカードをクリックした時に、次々と表示されるメッセージ群が記述されています。
一つのシナリオは一つのフォルダにまとめられ、その中に各種画像ファイルや設定ファイル、音声ファイルや音楽ファイルが放り込まれています。ゲーム本体も一フォルダを一シナリオとして見なすため、そのフォルダをアーカイブに入れて圧縮すればシナリオはもう配布できます。本来はもっと気をつけるべき事がありますが、単純化すればこのような展開になります。
「絵なんて描けない」「音楽の作り方がわからない」「背景画像を持っていない」等々、作ろうとする障害になりそうな事はいくつも挙がってきます。
しかし、当サイトも含めて世の中にはCard Wirthの素材を扱うサイトがいくつもあります。まずはGROUP ASK WEBSITEのCardWirthLinks'Networkを訪れてみてください。背景画像はちょうどいいのが見つからないかもしれませんが、「商用でない使用ならば許可する」とある自然写真の素材サイトや店頭で売られている風景写真CD-ROMなども、使用条件に留意すれば利用する事も可能です。
あとは独自の物語さえ構築する事ができれば、シナリオ作りはすぐにでも始められます。
少し苦言になってしまうかもしれませんが、Card Wirthはフリーソフトです。そしてシナリオ制作に関わる素材も楽に手に入れられます。さらに配信も楽で、ここまでの過程を全て一人でやる事ができます。しかし、そこに落とし穴があるのです。
言わんとしている事はもうわかっているかもしれませんね。あえて書きますが、作りの甘い作品でも誰にはばかられる事無く配布できてしまうという事です。
「戦闘から逃げたら何もできなくなった」「どんな強敵も一瞬でリスクなく倒せるアイテムが手に入ってしまう」「内容がほとんどないのに報酬が莫大だ」「突然自分のキャラが消されてしまった」等々等……。
製作者にとって、"作品を作る"という事に対する倫理的な責任はあれど実質その創作行為を縛るものはあまりありません。例えそれが未熟な作品であっても、著作権等に明確に違反していなければ何も言えないわけです(感想としてなら言う事はできましょうが)。そこはあらかじめ、プレイヤー側が覚悟しておく事が必要でしょう。
要するに、良くも悪くも色々な作品があるという事を知っておいてくださいって事です。
良いと言われる作品の中には本当に良いものがあります。そこではきっと、自分の生み出したキャラクターたちが生き生きと感じられる事でしょう。
GROUP ASK WEBSITEへ赴き、Adventure's Guildからシナリオを探してみてください。私のお薦めはここでは書きませんが、良いと思ったシナリオの作者は覚えておくと得ですよ。
やはりこれなくしては語れないでしょう。まずは遊んでみる、体験してみる事です。
同じくGROUP ASK WEBSITEからCard Wirth - DOWNLOADと辿ってみてください。そこにある"Card Wirthスタートパック"をダウンロードすればもう実行環境は手に入ります。
その中にはCard Wirth本体と諸々のデータ、それにgroupASK制作の基本シナリオ『交易都市リューン』と『ゴブリンの洞窟』が含まれています。前者は、都市に出て装備品を整える、いわゆる"店シナリオ"というものに分類されます。それに対して後者は、実際の冒険をするごくごく一般的なシナリオです。実質プレイ時間はかなり短いですが、これらは世界観を形作る大元のようなものです。一度は通してプレイしてみましょう。
また、SCENARIOから他の基本シナリオをダウンロードしてくるとより雰囲気をつかむ事ができるでしょう。他の作者による様々なシナリオも、これらを十分に参考にしているはずです。
いかがでしょうか。雰囲気は存分に伝わりましたか?
もし、やってみて興味を覚えたのなら、当サイトで公開しているシナリオ『くだらないオチ』もお手に取っていただければ幸いです。比較的低レベルでクリアできるようになっていますよ。